研究内容

  世界のエネルギー消費量は経済成長とともに増加を続けており、そのエネルギー資源の大部分を化石燃料に頼っています。今後もますますエネルギー需要は増加すると予想されており、それらのエネルギー需要に応えつつCO2排出削減などの課題も同時に解決していかなければなりません。そのためにはエネルギープラントの高効率化は必要不可欠です。本研究室では、次世代原子炉や核融合炉のような次世代のエネルギープラントに使用可能な高機能材料の開発を目指し、実験・計算の両面から研究開発を行っています。

スーパーODS鋼の開発

superODS 次世代原子力システムとして検討されている超臨界圧水(SCW)冷却高速炉および鉛ビスマス(LBE)冷却高速炉の高効率化に不可欠な高燃焼度化対応型の革新的な燃料被覆管材料を開発することを目的に研究開発を進め、ナノテクノロジーによる材料組織制御技術を駆使することで、高温でも強く、錆びにくく、且つ、原子炉照射にも強い、三拍子の揃った革新的な原子炉燃料被覆管材料「スーパーODS鋼」の開発に成功しました。(ODS鋼: Oxide Dispersion Strengthened Steel)

 従来のステンレス鋼は、高燃焼度化を達成する上で照射下寸法安定性、照射脆化、ヘリウム脆化及び耐食性等に深刻な課題を抱えていました。また、ナトリウム冷却高速炉(SFR)用に開発された高性能な酸化物分散強化型(Oxide Dispersion Strengthened: ODS)9Cr鋼は、高温強度と耐照射性能の要件を満たしていますが、LBEやSCWに対する耐食性が十分ではありません。そこで本研究室では、Cr濃度が13%以上の高Cr-ODSフェライト鋼製造技術をベースにして、従来に無い合金設計と製造プロセス法を考案することにより、高温強度特性、耐照射性能および耐食性の全てを兼ね備えた革新的な燃料被覆管材料として「スーパーODS鋼」を開発し、次世代原子力システムの高効率化・高燃焼度化の実現に向けて貢献しています。また、スーパーODS鋼は、超臨界火力プラントの配管、自動車用鋼板や配管、鉛電池隔壁等、非原子力分野での応用も可能であり、広範な用途が見込まれています。

 また、このようなODS鋼の優れた特性が何に起因するのかを、透過型電子顕微鏡等を用いて原子レベルから解析し、その解明に取り組んでいます。

 

低放射化フェライト鋼の照射影響評価

flags 低放射化フェライト鋼は核融合炉第一壁への第一候補材として、日本、アメリカ、EUなどなど多くの国と地域で研究開発が続けられています。低放射化フェライト鋼は、熱交換器等に利用されていいたフェライト/マルテンサイト鋼の組成をもとに、添加元素のMoやNbをWやTaで置き換えることで誘導放射能の低減を狙った材料です。日本が開発した低放射化フェライト鋼F82Hは、国際エネルギー機関(IEA)のもと、世界中でラウンドロビン試験に供され、世界で最もデータベースが充実した材料となっています。本研究室では、核融合炉の早期実現に向けた日欧の国際共同研究開発プロジェクトであるBA活動に参画し、低放射化フェライト鋼の照射影響について研究を行っています。

 

プラズマ対向材料評価

w 核融合炉ダイバータやブランケット第一壁といった炉心プラズマに対向する機器のことをプラズマ対向機器と言い、それらに使用される材料をプラズマ対向材料といいます。特にダイバータは定常運転時で約10 MW/m2の熱負荷がかかるとともに、極短時間ではありますがELMと呼ばれる20 MW/m2相当の非定常な高熱負荷に曝されることが想定されています。このような高い熱負荷に耐える材料としてタングステンが近年注目され研究が進められています。本研究室では、タングステンダイバータを対象として、FEMを利用した応力解析、高温引張試験機や高温衝撃試験機(自作)などを活用した高温特性評価、イオン加速器を用いた照射影響評価など様々な視点からプラズマ対向材料の研究を行っています。また、日米科学技術協力事業核融合分野プロジェクトPHENIX計画に参加し、タングステンに及ぼす中性子影響について共同研究を進めています。

 

耐熱被覆技術開発

joint 酸化物分散強化(ODS)鋼は、高温強度特性、耐照射性、対環境性等の優れた特性のため、先進核融合ブランケット構造材料として期待されていますが、既存の溶接法ではその優れた特性を維持が困難であるため、新たな接合技術開発が必要とされています。本研究室では、ODS/W、ODS/ODS、ODS/F82H、F82H/F82Hなどの接合技術の開発・評価を行っています。これまでに、液相拡散接合、固相拡散接合、摩擦攪拌接合、電子ビーム溶接など、様々な接合手法に取り組むとともに、接合後の照射特性についても評価を行っています。

 

高エネルギー粒子線を用いた原子レベル材料挙動解析

radiation 原子炉や核融合炉で使用される材料は炉心からの中性子によって損傷を受け、機械特性が劣化します。その劣化度合いを適切に評価することが、原子炉の安全や核融合炉の実現において重要です。本研究室では、粒子線照射による材料劣化のメカニズムを原子レベルから解き明かすことを目的として、実験・計算の両面から研究を進めています。特に、本研究所の有するイオン加速器DuETは、2つのビームラインによって重イオンとHeの同時照射が可能で、核融合炉環境を模擬することができる有力なツールとなっています。FIBやTEMといった最先端の分析機器も揃っており、原子レベルでの解析が可能です。得られた実験結果は、第一原理や分子動力学などの計算機シミュレーションも活用しながら検討を行い、欠陥の発達挙動や機械特性に及ぼす影響など、幅広いスケールで研究を進めています。

 

応力腐食割れの解明

scc 炉心シュラウドのひび割れなど低炭素ステンレス鋼における応力腐食割れが多数報告されており、応力腐食割れのメカニズム解明は原子炉の安全運転において重要課題の一つといえます。また、核融合炉の冷却水配管材料としても低炭素オーステナイト鋼が検討されており、応力腐食割れの発現が懸念されます。本研究室では、超臨界水や高温高圧水など様々な環境を模擬可能な装置を用いて応力腐食割れのメカニズム解明に向けた研究を展開しています。

 

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